抄録集
01
一般口演 外傷I-1
演題 右側上顎中切歯の脱臼・左側上顎中切歯の歯冠破折の1例
演者 橋本和幸 (ごとう歯科クリニック)
著者 後藤匡史、後藤修一郎
   今回我々は右側上顎中切歯は完全脱臼し、同時に上顎左側中切歯は歯冠破折がみられる症例に遭遇したので報告する。
 17歳8か月の女児で、バイクと衝突し、口腔内は出血がみられ、脱落歯はティッシュにくるんで2時間以内に受診した。
 口腔内清掃消毒後、左側上顎中切歯は歯髄との交通はなかったのでコンポジットレジンで歯冠部は形態修整し、右側上顎中切歯(脱落歯)は0.9%生理食塩水に浸し、歯に付着している歯根膜に注意し、歯槽窩にもどして再植し左側上顎側切歯から右側上顎犬歯までをスーパーボンドC&Bクリヤー(サンメディカル社製)接着性レジンと三金補強線ミディアム(デンツプライ三金株式会社製)ワイヤーで2か月間固定した。EPTは再植歯を除いて(+)に反応した。
 3か月経過後、再植歯は歯根膜炎を惹起したのでVitapexRで粘剤根管充填を施し経過観察を行っているので報告する。
02
一般口演 外傷I-2
演題 外傷により、歯冠破折・亜脱臼・軟組織の損傷が同時にみられた1例
演者 後藤修一郎 (九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野)
著者 後藤匡史、嶋口馨、橋本和幸
   初診、平成21年4月7日 男児11歳、PM4:30頃、友達と遊んでいて金属バットが顔面に当たり、上顎左側中切歯及び側切歯が亜脱臼、上顎右側中切歯歯冠破折、上下の口唇裂傷がみられた。処置および長期の経過観察をしたので報告する。
03
一般口演 外傷I-3
演題 軟組織の損傷を伴う脱臼について
演者 嶋口馨 (ごとう歯科クリニック)
著者 後藤匡史、後藤修一郎
   初診、平成21年4月7日 男児11歳、PM4:30頃、友達と遊んでいて金属バットが顔面に当たり、上顎左側中切歯及び側切歯が亜脱臼、上顎右側中切歯歯冠破折、上下の口唇裂傷がみられた。処置および長期の経過観察をしたので報告する。
04
一般口演 外傷I-4
演題 歯根破折を有した根未完成幼若永久歯の再植に対する長期観察
演者 辻 裕文 (九州歯科大学口腔診断学講座画像診断学分野)
著者 森本泰宏
   根未完成歯の完全脱臼の予後を左右する因子の一つは歯根の状態は重要である。条件が合えば、再植歯の歯根は正常に形成される。しかし、条件が満たされない場合には、最悪歯根の消失が生じる。今回我々は、歯根破折のある幼若永久歯を再植後、長期観察した経過について報告する。患児は6歳11ヶ月の男児で、主訴は上顎左側中切歯の脱落であった。初診時のX線写真上、歯根根尖部に破折線を認めた。通法に従い歯牙固定を行い、経過観察した。術後1年で、X線写真上、歯根消失と根尖部の透過像を認めた。しかし、臨床的に異常は認めなかったため、経過観察を続けた。術後約4年で、再植歯の歯根部唇側歯肉に膿瘍形成を認めた。そのため、歯内療法を施し、カルシウム製剤にて根管充填後、コンポジットレジンにて修復した。その後、予後に関して明らかな異常は指摘されていない。
05
一般口演 外傷I-5
演題 12歳児の上顎左側1歯冠歯根破折歯を意図的再植で保存した1症例
演者 齋藤誠 (さいとう歯科医院)
著者 齋藤誠
   患者は初診時12歳女性。3日前から上顎左側1の根元相当の歯肉が腫れたと訴えて2009年9月24日初診。1年前に患歯に打撲を受け、受診した前医で歯冠亀裂があるとしてレジン充填処置されていた。初診時、患歯は根尖部歯肉腫脹があり、歯科用レントゲン写真で歯冠中央から歯根遠心面にかけての破折線と根尖病巣を認めた。初診日より根管治療を行い、破折部はEr:YAGレーザーで感染歯質を蒸散して4META/MMA-TBBレジンで封鎖修復した。根管充填後、ファイバーポストとレジンで支台築造をした。歯冠補綴物装着前にTEKが脱離したが放置していたところ、支台歯の破折部が離開した。12月27日、破折片の口腔外での接着修復を目的に患歯の意図的再植を行った。炎症症状が無いことを確認して2010年3月20日にジルコニア・オールセラミック冠を装着した。その後予後良好で経過しているので、若干の考察を加えて報告する。
06
一般口演 外傷II-1
演題 上顎左側乳中切歯の軟組織損傷を伴う陥入の1症例
演者 蒲生佳華 (しらゆりデンタルクリニック)
著者 橋本敏昭
   乳幼児期での外傷による軟組織の損傷を伴う歯の陥入はしばしば遭遇する。今回我々は4歳0か月、男児で平成7年9月25日、打撲による上顎左側乳中切歯の軟組織損傷を伴う歯の陥入症例に遭遇した。
エスカレーターでつまづき、手すりで上顎左右側乳中切歯を打撲した。上顎左側乳中切歯は陥入し、疼痛があり、さらに下口唇部に損傷がみられ出血を伴っていたため、救急病院に
運ばれ応急処置を受けた。平成7年9月26日、当院を受診したので治療計画をたて経過観察を行った。
受傷2か月後、上顎左側乳中切歯は変色、EPT(-)のため歯内療法を実施した。
5歳3か月、上顎左側乳中切歯は早期脱落した。
14歳1か月経過までの矯正治療を含め考察を行ったので報告する。 
07
一般口演 外傷II-2
演題 歯槽骨骨折をともなって歯肉内に陥入した上顎乳前歯の臨床における対応
演者 吉田忠司 (吉田歯科医院)
著者 吉田忠信、小滝盛人、安炳旭
  緒言:乳幼児期に外傷により歯槽骨骨折を伴って歯肉内に陥入した乳歯は、抜歯か保存かの選択を迫れる場合がある。親の同意を得、再植を行った2症例について報告する。
症例1
初診 平成18年5月8日
年齢性別 平成15年2月23日生 3歳2ヶ月 男児
主訴 家でこけて前歯がなくなった。休日診療所に来院。
経過 休日診療所に出務中の演者が確認したところ、上顎左右乳中切歯と左右乳側切歯は、歯肉内に完全に陥入。再植固定を施し、5年間上顎両側中切歯萌出まで、経過観察を行った。
症例2
初診 平成18年1月23日
年齢性別 平成15年12月10日生 2歳1ヶ月 女児
主訴 前歯は出血でほとんど見えない。
経過 歯肉出血が多く、患児が泣き叫ぶので手に負えないとのことで、他医院からの紹介にて来院。右上乳中切歯は歯肉内に陥入、右上乳側切歯と左上乳中切歯及び、左上乳側切歯は亜脱臼により、動揺度2の状態であった。右上乳中切歯は再植後、固定を施し、約5年半経過観察を行った。
08
一般口演 外傷II-3
演題 上顎犬歯萌出に起因した側切歯歯根吸収の一例
演者 伊東 泰蔵 (医療法人伊東会 いとう歯科医院)
著者 川鍋絹恵、川鍋 仁
   上顎永久前歯の萌出障害の発現頻度としては、中切歯と犬歯が半数以上を占め、その1/3が犬歯の萌出障害を認めたと田口(2009)は報告している。本症例のように切歯は萌出して犬歯の萌出余地が存在するような状態では異常所見を早期に発見出来ないことがある。
 上顎犬歯が顎骨内を移動した結果異常をきたす原因としては、側切歯の形態的変異や小臼歯部の顎骨内での位置的関係、あるいは歯列弓幅径の狭窄など考えられる。
 永久切歯の歯根吸収の程度によっては保存の可否で治療方法が大きく変化する。抜歯になれば矯正治療期間の延長や不自然な歯列の配列となる。
 今回、側切歯に重度の歯根吸収を認めたが歯列弓幅径の拡大を行って、有髄歯で歯の保存を試みた。この治療法は永久的ではなくトラブルが生じた場合には骨の育成が認められているのでインプラント治療も考慮している。
09
一般口演 外傷II-4
演題 異物刺入による軟口蓋損傷に対し全身麻酔下にて対応した1例
演者 井上和也 (九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座口腔顎顔面外科学講座)
著者 久保千沙、吉濱直哉、杉友貴、碇竜也、大山順子、佐々木匡理、竹之下康治、森悦秀
   異物刺入による口腔内刺創は、就学前の好奇心旺盛な小児に特有な外傷の一つである。その受傷原因のほとんどは転倒によるもので、異物は玩具、歯ブラシなどの身近に存在するものが多い。初診時に受傷原因となった異物を確認することは、異物の残存の有無や深達度の評価のために重要であるが、保護者等が目撃していない場合、その異物を特定できないことも少なくない。このような場合、CTやMRIを用いた軟組織評価を行い、深部の血管、神経の損傷、粘膜下の臓器損傷も考慮に入れた慎重な対応が要求される。
 今回我々は、初診時に異物の特定が困難であった3歳女児の軟口蓋刺創に対し、全身麻酔下で縫合処置し対応した1例を経験したのでその概要を報告し、あわせて当科での小児の口腔軟組織への刺入による外傷の臨床的検討を行う。
10
一般口演 統計-1
演題 伊東歯科口腔病院救急外来における小児口腔外傷の臨床統計的検討
演者 遠藤善孝 (伊東歯科口腔病院)
著者 川鍋 仁、伊東泰蔵、伊東隆利
   伊東歯科口腔病院では、1975年以来24時間365日、口腔外傷患者に対応している。
今回われわれは、2010年に時間外および休日(以下、救急外来)に受診した口腔外傷患者について臨床的検討を行ったので報告する。
【対象】2010年1月1日から12月31日までの1年間に、救急外来を受診した口腔外傷症例を対象とした。
【結果】1年間に256名(男150名、女106名)で、0から4歳までが43.5%を占めていた。また、受診時間帯では、18時から21時に多かった。病型別では、歯の外傷においては上顎前歯が多かった。軟組織受傷においては上唇が多かった。さらに、Hellman歯齢別分類では、[4]A期以上が34.4%次いで[1]C期24.6%の順であった。処置別では固定と経過観察が同数を占めていた。
【考察】結果より、身体的バランス獲得以前の幼少期(0から4歳)に注意することが口腔外傷受傷者数の減少に寄与できるものと考えられる。また、今後も継続した救急活動を行い地域医療に貢献したいと考えている。
11
一般口演 統計-2
演題 当科における小児患者、特に外傷患者の統計について
演者 六反田 賢 (今給黎総合病院歯科口腔外科)
著者 吉田雅司
   <緒言>今給黎総合病院歯科口腔外科は、平成18年に開設、今年で5年を経過する。当科を受診した0~15歳の小児外傷について検討した。<対象と方法>受診者数男児241人、女児286人の計527人。内訳は、矯正治療に関連した外科処置によるものが193人、外傷が97人、その他327人。<結果>1.外傷患者97人の内訳は、男児57人、女児40人。2.原因は転倒が最も多く46例、次いでスポーツによるものが9例、壁などへの衝突が7例、転落が6例。3.部位別では、顔面の軟組織において正中が13例、左側9例、右側8例。上唇6例、下唇10例、舌9例。4.歯の破折や脱臼について、男児では上顎前歯が18例、下顎前歯が1例、女児では上顎前歯10例。5.原因別年齢分布は、転倒など偶発的なものが男児では4.9歳 女児が6.0歳。喧嘩が男児7.5歳、女児10歳。スポーツ中の外傷は男児11.7歳、女児は13.5歳であった。
12
一般口演 統計-3
演題 当科における過去26年間の口唇裂・口蓋裂患者の臨床統計的観察
演者 後藤尊広 (琉球大学医学部附属病院 口唇口蓋裂センター)
著者 新垣敬一、天願俊泉、砂川奈穂、藤井亜矢子、片嶋弘貴、朱 海英、仲間錠嗣、砂川 元
    1 過去26年間の口唇裂・口蓋裂 (CL/P)患者について、臨床統計的観察を行い以下の結果を得た。
・1985年から2010年までに当科を受診したCL/P患者総数は1092人であった。
2 1989年から2010年までの一次症例について詳細な分類を行い以下の結果を得た。
・一次症例総数は627症例であった。
・一次症例のうち裂型別分類では唇(顎)裂(CL±A)が195症例(31%)、唇顎口蓋裂(CLP)が254症例(41%)、口蓋裂(CP)が178症例(28%)であった。
・性別分類ではCL±Aのうち男性が115症例(59%)、女性が80症例(41%)であった。CLPのうち男性が162症例(64%)、女性が92症例(36%)であった。CPのうち男性が74症例(42%)、女性が104症例(58%)であった。
・CL/P以外に合併先天異常を有する患者は17.7%に認められた。
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一般口演 統計-4
演題 当科における小児日帰り全身麻酔の検討
演者 千代 愛 (飯塚病院歯科口腔外科)
著者 中村和弘、野間俊宏、中松耕治
  【目的】
当院では歯科口腔外科・小児外科・婦人科・形成外科において日帰り全身麻酔が行われている。日帰り全身麻酔症例は一般病棟を介し0泊1日で行なっているが、当科ではパスを使用しているため円滑な治療が可能である。今回我々は、当科での小児における日帰り全身麻酔について現状を報告する。
【対象・方法】
対象は平成16年から平成23年7月までに当科にて日帰り全身麻酔を行なった小児。手術時間、麻酔時間、在院時間、合併症について検討した。また、手術決定から手術日までの流れと当日の流れについて小児日帰り全身麻酔パスを紹介する。
14
一般口演  腫瘍、嚢胞、その他-1
演題 骨粗鬆症予防の為の小児期の充分なカルシウムの摂取について
演者 曽我富美雄 (九州歯科大学放射線講座)
著者 曽我富美雄
   我が国の栄養事情は、飽食の時代と言われ、国民栄養調査でも分かるように、カロリーの取り過ぎを含めあらゆる栄養素が平均摂取量を超えているのに対し、カルシウムだけが、平均所要量に達していない。カルシウムが、生命維持の為に重要な役割を果たしていることは、生体内の99%が骨に存在し1%が軟組織や体液中に存在していることからも明らかである。厚生省は、成人1日辺りのカルシウムの摂取量を600mgと定めているが、これは、体重、1kg当たり10mgが、平均的に必要とされているもので、長期の小児に置いては、この2倍のカルシウム摂取量が必要となる。成長期の中では、思春期を中心として、最大骨塩量peak bone mass を示す事が報告されている。外傷や成人の骨粗鬆症の予防を考えた時、小児期での充分なカルシウム摂取が重要な役割をもつことが考えられる。
15
一般口演  腫瘍、嚢胞、その他-2
演題 先天性に生じたBlandin-Nuhn嚢胞の1例
演者 町田李菜 (熊本大学大学院医学薬学研究部総合医薬科学部門感覚・運動医学講座顎口腔病態学分野)
著者 山本康弘、林田香織、中山秀樹、平木昭光、篠原正徳
  緒言:粘液嚢胞は日常の臨床でしばしば遭遇する疾患であるが、先天性に生じることは極めてまれである。今回われわれは、先天性に生じたBlandin-Nuhn嚢胞の1症例を経験したので報告する。症例:生後14日、女児。主訴:舌下面腫瘤の精査。現病歴:出生時より舌下面に腫瘤があることを産婦人科医に指摘され、精査目的に当科受診した。現症:左舌下面に直径4mm大の境界明瞭な透明感のある白色を呈した腫瘤を認めた。先天性歯はみられなかった。臨床診断:Blandin-Nuhn嚢胞。処置および経過:初診時に処置は行わず経過観察を行ったが、約5か月後腫瘤の増大を認めたため摘出の方針となり、生後6か月全身麻酔下にて嚢胞摘出術施行した。術後1年半経過し、再発なく経過良好である。まとめ:本症例は、Blandin-Nuhn嚢胞が先天性に生じたと推察され、我々の抄猟した限り、他の症例と比較して出生後早期の受診例であった。
16
一般口演  腫瘍、嚢胞、その他-3
演題 2歳男児にみられた顎下腺導管内唾石症の一例
演者 堤 晋一 (九州大学歯学研究院口腔顎顔面病態学講座口腔顎顔面外科学分野)
著者 熊丸 渉、吉住潤子、杉浦 剛、竹之下康治、森 悦秀
   6歳以下の小児における顎下腺唾石症は稀であり、当科における全顎下腺唾石症に対する調査では約1.5%(5/328例)にすぎない。今回われわれは2歳男児の顎下腺導管内唾石症を経験したので、文献的考察を加えて報告する。患者:2歳男児。主訴:右顎下部腫脹、疼痛。現病歴:初診1年前より右側顎下部の唾腫・唾仙痛を自覚。抗菌薬投与によって軽快を繰り返していた。初診前日右側下顎臼歯の疼痛を訴え、近歯科受診。唾液腺炎の診断にて抗菌薬投与され翌日当科初診。現症:初診時、右側顎下部及び右口底の腫脹は著明であったが、唾液の流出は認められた。右舌下小丘より5mm後方に硬固物を触れ、咬合法にて類円形の不透過像を認めた。診断:右側顎下腺導管内唾石症。経過:全身麻酔下での唾石摘出を予定していたが2週間後に自然排出し、その後1ヶ月経過しているが経過良好である。
17
一般口演  腫瘍、嚢胞、その他-4
演題 口腔領域の血管腫に対するエタノール局所注入療法
演者 矢内雄太 (佐世保共済病院 歯科口腔外科)
著者 角町鎮男、川村英司、窪田泰孝
   口腔顎顔面領域の血管腫の治療法の選択においては、腫瘍に対する治療効果とともに、治療後の機能的、審美的障害を十分に考慮することが求められる。エタノール局所注入療法は、手技が容易で治療に伴う障害も少なく、良好な腫瘍縮小効果が得られることから、同療法単独で、あるいは外科的切除の前治療としてその有用性が示されている。われわれは、口腔に発生した表在性の血管腫に対して局所麻酔下に同療法を施行し、機能と形態を温存しつつ良好な治療成績を得たので、その概要を報告する。
18
一般口演  腫瘍、嚢胞、その他-5
演題 埋伏歯を萌出誘導した単嚢胞型エナメル上皮腫の1例
演者 佐々木三奈 (福岡歯科大学 口腔顎顔面外科学講座)
著者 橋本憲一郎、池邉哲郎、大関 悟
   エナメル上皮腫は良性腫瘍だが、再発しやすく治療選択に苦慮する。今回われわれは埋伏歯を萌出誘導させた単嚢胞型エナメル上皮腫の1例を経験したので報告する。症例は8歳男児。右側下顎角部の無痛性腫脹を主訴に来院した。右側下顎臼後部に羊皮紙様感を伴う顎骨膨隆を触れた。パノラマX線写真で類円形、単房性の透過像を認め、透過像内には右下7歯冠を含んでいた。含歯性嚢胞の診断を得たが、エナメル上皮腫の可能性もあり、患者の年齢などから組織検査をかねて開窓療法を選択した。腔内に茶褐色の漿液を認め、腔下方に右下7歯冠が確認できた。組織学的には嚢胞構造を呈し、腔内面には円柱形細胞が配列し、その上層に星状細胞からなる網様構造がみられ、単嚢胞型エナメル上皮腫の診断を得た。塞栓子を装着し、開窓部に腫瘍が増殖する都度に掻爬を行った。同時に右下7の萌出誘導を行った。術後5年経過した現在、腫瘍増殖なく、右下7も良好に萌出した。